==================== 初等幾何の三角形の試行 Ver0.01 CopyRight miyama. 2012 June www.geocities.jp/kaz_kimijima kaz_kimijima@yahoo.co.jp ==================== はじめに 筆者は、前回のファイルを作成していた時 に、三つの数の論理を考える際には、やはり 三角形の幾何を考えないわけには行かないか もしれないとは、ばくぜんとではありますが 想っていました 今回、自己確認の意味で、三角形幾何の整 理を初等幾何の範囲で、若干の試行を行いま した 要は、筆者の高校時代の数学の復習です ワープロソフト上で試行錯誤をしたことを 整頓して、いわばついでとしてここに公開し たいと想います 現時点で高校生の生徒さんの履修の参考に でもなれば幸いです 許認可条件 フリードキュメントです 閲覧配布は自由です ただし、インターネット文法HTML3.0以上 のブラウザが必要です(WINMACとも大抵のパ ソコンなら大丈夫です) 免責 この内容を使用して生じたあらゆる不具合 不都合について著者は何らの責任を負うもの ではありません 以下本編 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 本編目次 1 三元二乗の展開式 2 三辺の長さが分かっている場合の三角 形の面積 3 三元三乗の展開式 4 三角形の内角の和が180度=π/2ラ ジアンであることの証明:多角形の内角の和 5 正弦定理の証明 6 正弦定理の値が三角形の外接円の直径 であることの証明 7 三角形の外接円の中心が三角形の重心 でないことの証明 8 内接円について 9 余弦定理と平行四辺形 10 雑記 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1 三元二乗についての考察 第三項の試行を含め、任意の三実数を対等 に扱う演算のひとつとしてその和の二乗と三 乗があります おそらく煩雑になるからでしょうが、すく なくとも試験の応用問題のためにはあまり学 校では履修しません ただ、三つ一組のトリプレットを追いかけ るための演算には必要かもしれませんので、 その代数的対象性の確認をも兼ねてここに 記載します * これは二乗公式の三元についての展開です 行列表記のように見える部分はここでは和 を表現します この公式は次の三角形の面積を求める公式 に表記方法がよく似ているようです (a+b+c)^2= |a| |a^2 ab ac| (a+b+c)|b| = |ab b^2 bc| |c| |ac bc c^2| = (a^2+b^2+c^2) + 2(ab+bc+ca) 1 1 1 = (a^2+b^2+c^2) + 2abc( - + - + - ) a b c :ただしabc=0でない場合 2 三辺の長さが分かっている場合の三角 形の面積 普通、学校で履修する三角形の面積とは、 底辺掛ける高さ/2、の公式で習うそれです これは、平面の面積が直交座標系で出来て いることの当然な帰趨です ただし、普通三角形とはそれぞれの辺が幾 何的には対等として扱われるので、どれかひ とつの辺が「底辺」として特別扱いされるの は、不自然です ここでは、任意の三角形の各辺の長さのみ が判っている場合にその面積をもとめること ができる公式を導きたいと考えました 図中、緑色で表された文字は媒介中間変数 です h:height で高さ t:temporary です 底辺掛ける高さ/2の公式より、 s = h * c/2 ---面積式 ピタゴラスの定理により b^2 = h^2 + (c-t)^2 ゆえに b^2 = h^2 + t^2 + c^2 -2ct 等式b a^2 = h^2 + t^2 等式a 等式bから等式aを引いて b^2 - a^2 = c^2 - 2ct a^2 - b^2 + c^2 t = --------------- 2c 等式aより変形 h^2 = a^2 - t^2 面積式は以下ですから s = h * c/2 高さhが平方根のため二乗形式とし s^2 = h^2 * c^2/4 = (a^2-t^2)c^2/4 ここで t^2 - a^2 = v--部分相殺-v a^4+b^4+c^4+2(-a^2b^2-b^2c^2+c^2a^2) -4c^2a^2 ------------------------------------ + -------- 4c^2 4c^2 よって s^2 = c^2(a^2 - t^2)/4 = 2(a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2)-(a^4+b^4+c^4) ------------------------------------- 16 面積はこの式の根ですから整理して平方根を 作成すると s = ____________________________________ 1 / 1 1 1 - /2a^2b^2c^2(---+---+---)-(a^4+b^4+c^4) 4/ a^2 b^2 c^2 となります 内部が事実上四乗形式ですが外部に大きな 根がついていますので、乗数は全体として二 乗形式、 また差と和の違いはありますが、これは上 記の三元二乗の展開式とおなじ形式であるこ とが興味深いことです 3 三元三乗の展開式 これは三元の表記方法の試行です 参考までに 与式: (a+b+c)^3 = (a+b+c){(a^2+b^2+c^2)+2(ab+bc+ca)} = a^3 ab^2 ac^2 |a^2b abc ca^2| a^2b b^3 bc^2 + 2|ab^2 b^2c abc| a^2c b^2c c^3 |abc bc^2 c^2a| ここでたとえば a a^2b = abc- c ですから 与式: a^3 + b^3 + c^3 a b c b c a + 3abc( - + - + - +1 + - + - + - +1) b c a a b c と表現できます 4 三角形の内角の和が180度=πラジ アンであることの証明 これもピタゴラスの定理と同様に幾何学で は重要な定理であるにかかわらず、筆者はそ の証明をみたことが、少なくとも記憶のなか ではありませんでした 4−1 まず三角形一般ではなく、直角三 角形での証明を求めます 直角三角形で内角の和が180度=πであ るためには θ + η = π/2 であればよいわけです 筆者は証明に三角関数の加法定理を用いま した 加法定理はより高学年で履修した気がしま すので、教科の構成からみればカリキュラム の逆行ですが、自分はこの方法しか想いつき ませんでした 加法定理の導きそのものに内角の和が18 0度であることがもし、利用されていればこ れは本末転倒になりますが、一応証明をここ に記しておきます θ + η = k とおいて左辺を任意値化し、 k = π/2 であることを証明できればよいことになり ますから η = k − θとし、三角関数の加法定理 を利用してηを消去し、 直角三角形の任意の鋭角θから直角を除く 残りの角度をθの関数として表記し、 三角関数の定義の cosθ = sin(k - θ) または sinθ = cos(k - θ) という関係から、θが任意値であるという恒 等式条件を利用してkの値をもとめます ・cosを使う場合 cos(k-θ) = cos k*cos θ - sin k*sin(-θ) これが sin θ と等しく、またθは任意値の恒等式条件を値 kは満たさなければならないですから sin(-θ) = -sin θより cos k = 0 sin k = 1 という条件が要請され、よって k = π/2 (0<=k<=2π) となります ・sinを使う場合 sin(k-θ) = sin k*cos(-θ) + cos k*sin(-θ) これが cos θ と等しくならなければならず、おなじく cos(-θ) = +cos θより sin k = 1 cos k = 0 よっておなじく k = π/2 です 4−2 一般三角形に対する拡張 直角三角形を二つ、直角を隣り合わせにす るようにして合体させると、その分の二つの 直角が相殺して「角」とはみなされないよう になりますので 二つの 直角 2 *π/2 つまり180度が 消滅 するので 二つの直角三角形から作られた新しい三 角形のの内角の和は 2*180−180 =360−180 となり180度になることができます この場合、 三角形Aの角ξと 三角形Bの角κは たしあわされて新しい三角形の角のひと つになります ξ、κはギリシャ文字で、それぞれクサ イ・カッパと読みます(胡瓜が好き) ちなみにはりあわせる三角形が直角三角形 でない場合は、このようにふたつの角の存在 を相殺できませんので、新しく作成される図 形の内角の和は、その分割される図形:多角 形がいくつの三角形に分割できるかによって 決まります よって内角の和は 四角形 360 五角形 540 六角形 720 となります 5 正弦定理の証明 筆者は正弦定理をあまり他で応用的に使用 したことがありません 正弦定理の概念は実はそんなに難しくあり ません 任意の三角形の各辺をabc、その対角をAB Cとおくと、 それぞれの角に対する正弦sinを考えるこ とができます 色つきの図で上のほうから順番に c*sinA = a*sinC a*sinB = b*sinA b*sinC = c*sinB という関係式を導けますから、 この3つの式を順に項 sinAsinC sinBsinA sinCsinB で割り c a ---- = ---- sinC sinA a b ---- = ---- sinA sinB b c ---- = ---- sinB sinC が得られ、よって連結して c a b ---- = ---- = ---- sinC sinA sinB これが正弦定理です ところでこれは分母と分子 が式として対等なので sinC ---- = ...... c の形式で書いてもいいはずです しかし履修で習う場合この形式でないのは この比の値が、「ある意味」を持つからなの でした 6 正弦定理の値が外接円の直径であるこ との証明 その意味とは、外接円の直径の値です 6−1 直角三角形での証明 ふたたび直角三角形で考えます 任意の直角三角形の頂点に外接する円を考 えると、直角を対角とする辺はこの円の直径 でありますから半径をrとしたとき 2r であります この直角三角形で正弦定理を記述して関係 性を探ってみます、 直角の角度をCとおくと 直角を基点とした場合の正弦定理の項は c 2r ---- = ----- = 2r sinC sin90 となります。ゆえに この直角三角形での正弦定理は a b ---- = ---- = 2r sinA sinB と記述できます(c項は省略) 6−2 一般三角形での証明 これを一般の三角形で証明することを考え ます 学生時代教わったおぼろげな記憶によると、 正弦定理に関して、 三角形の外接円を考えることができるとき、 図のように任意の一つの辺の長さと位置が 固定されているとき、 この辺に対する対応角でもある三角形の残 された自由頂点が円周上を移動するとき、 その角度は常に一定であることを教わった ような気がします (数一の教科書が手元にありません) つまり図ではPf:PointForFreeMoving と Pfダッシュの角度は一致するということです 図では緑の底辺に対する自由頂点が円周上 を移動するとき、 もし自由頂点のなす角が一定であれば、 緑の底辺の長さは一定ですから 正弦定理の式 x 底辺の長さ ---- sinX 自由頂点の角:一定値期待 により二つの変数値は一定ですから、代数的 にはこの比の値は変わることがありません この値は2rであることが期待されます なぜなら図でのPfは基点ですが、これは 直角三角形であり、このx/sinX 比は当然 2rだからです 自由頂点の角度が一定であることを初等幾 何として証明してみたいとおもいます まず、三角形ではなくまず最初に外接円を 考えます この円の中心から円周上の任意の三点にむ かって線分:図ではピンク:を引くと、これ は円の半径でもありますからこの三つの線分 の長さはともに等しい:rであることになり ます また円周上の任意の三点を線分で結ぶと三 角形が出現します これはさらに三つの半径線分で三分割され、 三分割された三角形は半径を二つの等しい 長さの屋根斜辺とする 三つの二等辺三角形になります ここで、円の中心周囲の全周が線分によっ て三分割された角度を順にαβγとします 代数対象性の個人的な好みから、固定され た緑色の底辺に対する角度をγとします 計算用紙(ワンコインショップで100円) に書き散らした試算を飛び越して結果を先に まとめると、 自由頂点の角度が、 この緑の固定底辺に対する角度γを唯一の 変数としてもつ定義が得られれば、その角度 は常に一定であることが示せます 特に角度αβは、自由頂点の位置によって 常に変化するので、自由頂点の角度の定義式 に入らないのが望ましいことになります ところで、この式には長さを示す定数が必 要ではありません これは外接円の大きさはこの命題に関係が 無く、たとえばこの円の半径を無次元比1と みなして考えてもかまわないからです この問題で重要なのは大きさではなくて比 率です ここで角αをふくむ三角形をA、 おなじくβをふくむそれをBとします それぞれの二等辺三角形の底面に対する斜 辺の両角は三角形の内角の和が180度=π ですから、それぞれ π-α π-β ----- ----- 2 2 です ゆえに図から、自由頂点の角は α+β π- ----- 2 と示せます ここで、白味噌(くどい 笑)は、三本の 半径線分は中心周囲円周を三分割しています から、 α + β + γ = 2π ですよって α + β = 2π - γ 2π-γ γ π - ------ = -- 2 2 と成増。志村坂上(筆者はこの前、所用で この町を通りました。風が通るいい町でした。) これで代数式に変数としてのαβが消去さ れて、 常にその値は緑の底辺の長さ:つまり角γ の値:が一定であれば変化しないことが判り ます 7 三角形の外接円の中心が三角形の重心 でないことの証明 論理的に考えると、外接円と三角形とでは、 円の方を先に考えた方が理解しやすいです つまり、外接円を持つ三角形とはその外接 円上に頂点を持つ三角形であることになりま す。あたりまえですが。 逆に出題として、先に三角形が存在してい てその外接円の中心を求めなければならない 場合は、 それぞれの頂点から等距離にある共通点を 探し出すかたちの問題になります もし電子計算機が使用可能であれば、逆関 数の値を導き出すアルゴリズムを使ってモン テカルロ法で望む限りの正確さで外接円の中 心をもとめることができるでしょう (筆者は、作図によってこの出題を説く方法 を知りません) 重心を理解するためには 最初にいきなり重心を考えるのではなく 同じ重量で二等分する分割線を考える必要 があります ここでは三角形について考えていますから 三角形の二等分線について考えます 板チョコやベニヤの板のようにある程度の 密度を持って一定の厚さのある板体を考える とき、その面積はすなわち重量となります 三角形の面積二等分線とは 底辺掛ける高さ/2 の公式により、 ある任意の辺において考えるとき、その辺 の二等分点(中点)とあいたいする頂点を結 んだ線分を、採用するのが概念としてはもっ とも判りやすいと想います 三角形はもちろん辺が三本ありますからこ の線ももちろん三本引けて、 それらの交点がいわばこの三角形の重心に なります (実際には、二辺からのふたつの等分線の交 点を作図すれば事足ります) 定義が違いますので、外接円の中心と重心 は一般には一致しません (余談ですが、重いものを両手で持ち上げる 場合は、両足を少しずらすと腰への一点集中 の力がかかりにくいので、からだの負担は軽 くて済みます。両足をそろえてえいやっとや ってぎっくりになる場合は、その部分が不幸 にして「腰痛交点」になってしまった場合で す) 8 内接円に関して 外接円の定義からみて、 三角形の各頂点と外接円の中心とを結ぶ線 分(外接円の半径)で 三分割された三角形はすべて 外接円の中心を頂点とする「二等辺三角形」 なので、 その各分割三角形における頂点(外接円の 中心)からの「垂線は、底辺を等分に分割」 します 一方、円の内接、ということは 三角形の各辺がその円に対してそれぞれ接 線であるということですから、 内接円の中心からの、内接点までのびる線 は、その三角形の各辺と垂直に交わることに なります ですから、外接円の中心と内接円の中心と は中心からの垂線という点において一致する ようにおもえます しかしこれは厳密には間違いです 内接の定義は、辺との接点がその接せられ る辺を均等に等分することを要請されてはい ません 内接円は三角形の辺を、内接円自身の都合 により、任意の位置で接してかまわないわけ です 一方外接円の中心にたとえばコンパスをあ て、各三辺に接する円を作図しようとしたと き、一般にはその円の半径はばらばらで、同 じ円としては一致しません * 当時の教科書が手元にないので、記憶がお ぼろげでですが、どうも演習問題として内接 問題を重点的に教わった覚えがありません あるいはまとめテストして適切な例題を作 ることがむずかしい性質を持っているのでし ょうか 若干の簡単な円周で内接の幾何を追いかけ てみましたが、やや複雑なので背後になにか 深い公理があるかどうかまでは洞察ができま せんでした 幾何は外接円同様、角ABC、辺abcで演算し ています。三角関数はtangentを使用してい ます 内接円の半径をrとし、これを媒介変数と して等式をまとめることができました たとえば二つの直角三角形において、 r r c = ------ + ------ tanA/2 tanB/2 ですからともにcrで割り 1 1 1/r = -------- + --------- c*tanA/2 c*tanB/2 同様に残りの直角三角形においても、演算し 1/r = 1 1 -------- + -------- = c*tanA/2 c*tanB/2 1 1 -------- + -------- = a*tanB/2 a*tanC/2 1 1 -------- + -------- b*tanC/2 b*tanA/2 が得られます 9 余弦定理と平行四辺形 余弦定理はどちらかといえばベクトルや複 素数と関連があるのでこのファイルで書くこ とが適切であるかどうかはわかりません ともかく初等幾何で導くことができます また条件を変えると、三角形の余弦定理で はなく平行四辺形の余弦定理になります これはベクトルの差分と和に対応する概念 です なおここでベクトルという場合は特に断り が無い限り、始点を原点0,0とするベクトル をも含みます 三角形の余弦定理 ピタゴラスの定理により c^2 = a^2*sin^2 θ+(b - a*cosθ)^2 = a^2*(sin^2 θ + cos^2 θ) + b^2 -2ab*cosθ = a^2 + b^2 -2ab*cosθ 平行四辺形の余弦定理 ピタゴラスの定理により c^2 = a^2*sin^2 θ + (b + a*cosθ)^2 = a^2*(sin^2 θ + cos^2 θ) + b^2 +2ab*cosθ = a^2 + b^2 +2ab*cosθ ab*cosθはベクトルで内積と呼ばれる量 です 9−1 内積について 「内積ってなに?積じゃないの」と筆者は学 生時代想ったものでしたが、これは行列の概 念が登場すると積と区別しなければならない 定義です なお、高次の数学では行列やベクトルなど の一種の数値の束集合をいわばバンドル記号 として、数の一種として扱います たとえばExcelのスプレッドシートで   A          B   C  D   アイテム       単価  数量 コメント 1 オレンジ       80円 3本 2 グレープ       80円 2本 3 アップル       80円 3本 4 レモン        80円 3本 5 ゴールデンアップル  80円 3本 6 チーズ味      100円 5袋 7 カレー味      100円 4袋 8 うすしおこんぶ味  100円 1袋 誰だこんなの買ってきたの という買物リストがあった場合、差し入れ を買う人が払う金額が、このリスト行列のカ ラムBとCの「内積」になります これはExcelでは、たとえばEのカラムの おのおののセルに、漸化式関数 E(1).value=B(1).value*C(1).value をおき小計を出し、その積算 sum(E(1).value-E(8).value) が合計金額です (ひさしぶりにかいたのでマクロの文法が間 違っているかもしれません。なおこの処理は VBAでも書けますがここの本旨ではないので 割愛します) これは数学上の表現では → ベクトルA a=(80,80,80,80,80,100,100,100) → ベクトルB b=(3,2,3,3,3,5,4,1) の内積が支払い金額になることになります 代数数式的に書くと二つのベクトルが → a=(a1,.....an) nは添え字 → b=(b1,.....bn) のとき内積の値は数列の和の表現式を用いて n Σ ak*bk k=1 と表現できます 9−2 積と内積の違い 上記の式を見て気がつくことですが、内積 は数値であるスカラー量です 一方ある演算が演算として成り立つために は、乗法で得られた結果が、もとの数(ベク トルや行列を含む広義の)の群に属さなけれ ばなりません 少なくとも内積は出力がスカラーですから、 一般的なベクトルに対しての演算としては群 の性質を持ちません 行列論の履修で教わることですが、行列の 乗法が成立するのは ・前の行列のカラムの数と ・後ろの行列の段の 数が一致することが必要です また当然のことですが、その不一致が存在 する限り、任意の形式の行列間において一般 的に乗法は成立しえないので 任意のカラム・段数の意味での大きさの行 列集合に対して、一般的に乗法:積は定義で きません また乗法がある2行列間で成立しても、こ の演算に参加する行列が、たてよこ不等な要 素数をもつ、正方形でない行列の場合、関数 として出力された行列の段組としての要素数 も一定しませんので、行列としての入力変数 と出力としての行列は 一般に群をなすことが出来ません この極端な例が、出力行列が 1カラム・1行段の行列である 数値スカラー である場合です これは (b1) ( .) ( .) n (a1,.. ak, ....an)(bk) = Σ ak*bk ( .) k=1 ( .) (bn) と定義でき, 要素数が一致しているかぎりベクトルを行 列とみなした場合、その内積は積と同義にな ります ただし、この積もまた一般にこのベクトル に対して群をなしません 9−3 ベクトルの内積を一般的な群をな す乗法として考えるために は、ベクトルの形式を拡張する必要があり ます (内積の定義で不可能なことからも判るよう に、ここでベクトルという場合には、それは 互いに要素数が等しい二つ、あるいはそれら の集合の群を指します) 履修するように、行列の積が一般的な群を なすために必要な条件は、それがおなじ大き さの正方行列の場合だけです 一般論は手にあまるので、ここでは平面上 のベクトル(つまり要素数2のベクトル)を 考えます また2*2の正方行列は平面状の一次変換 の写像を 意味しますが、これは任意のベクトルが基 本ベクトル1,1に対してどのような一般写 像をもたらすかという対応で理解できます 一般的に証明してみます 一次変換の行列をA、それに相当するベクト ルを→vとおきます ここで A = a b c d →v = p,q とおくと、 ある点Px,yに対応するAとしての一次変換は ax + by cx + dy です ここでベクトル→vをpに対する変換とみなす とpx,pyですから恒等的条件により ax + by = px cx + dy = qy よって2要素ベクトル→vを行列表記すると p 0 0 q となります これは、一次変換のうちたとえば一センチ 角の正方方眼を、 伸び縮みする菱形なんきんたますだれ方眼 (いちいちたとえが古い:意味がわからない 場合はマジックハンドのおもちゃのような変 形する菱形連続体を想像してください)の 対応格子交点へ写像する変換になります ここでベクトル→a=a1,a2を考えると a1 0 0 a2 ですから同様に→b=b1,b2との積は a1 0 * b1 0 = a1*b1 0 0 a2 0 b2 0 a1*b2 です ただしこれはこの正方行列の定義の上では もちろん積ですが もとになったベクトル間での積ではありま せん また左上の要素から右下の要素まで足し合 わせれば、それは元の2ベクトルの内積にな りますので、この表記はベクトルの内積の行 列表現になります また定義により、この形式は正方行列であ れば2*2でなくともn*n形式でも内積表 現としては成立します またこの表現は結合法則、交換法則をも維 持しています 右からでも左からでも任意のデータ束を連 結できます 9−4 ベクトル形式表現で内積を表現す る 内積の性質を若干なぞった後で,ふたたび 余弦定理の式をおさらいします ベクトルを要素表現してその内積を求めて 見ます 基本三角形を構成するベクトルを考えます →a = a1,a2 →b = b1,b2 とおき、これによって定義される二次的な ベクトルを→cと考えると →cが三角形を構成する場合それは基準ベ クトルの差分になりますから →c = a1 - b1 , a2 - b2 であります またこの逆ベクトルも三角形を閉じるので これをダッシュとおくと、これは前項の負値 になりますから →dushc = -a1 +b1 , -a2 + b2 = - →c となります 相補ベクトルが平行四辺形の頂点を示す場 合は、基本ベクトルの和になりますから →c = a1 + b1 , a2 + b2 です 代数的な対象性を維持するために、これも 負値ベクトルを定義します →dushc = -a1 -b1 , -a2 -b2 = - →c これらの四通りにおいて、ベクトル→cに おいて、要素からみたベクトルの長さの定義 は三角形平行四辺形ともに |→c|^2 = (a1 +- b1)^2 + (a2 +- b2)^2 であり、二乗されますからそれぞれの負値パ ートナーも差異が失われ、 = |→dushc|^2 であり = a1^2+a2^2 + b1^2+b2^2 +- 2(a1b1+a2b2) ^内積 という形式になります これは前項の辺cの長さの二乗を求める式 |→a|^2 + |→b|^2 +- 2|→a||→b|cosθ と数値上は等しいですから a1b1 + a2b2 = |→a||→b|cosθ これが内積です ここでcosθの性質を調べてみます 値、と書けないのは、この式が一般的には きれいに解けない(らしい)からです 上記の式から、差分を取り、平方根を取る ために二乗して、 cos^2 θ = (a1b1+a2b2)^2 --------------------- (a1^2+a2^2)(a2^2+b2^2) を得ます。 これはまとめられるだけで実際には応用・ 展開しにくい式です この式の性質を角θに着目して、他の要素 を極力単純化して調べることにします 便宜的にベクトルaもbも長さを1とすると、 分母が払われて、二乗も取れて cosθ = a1b1 + a2b2 となります 長さが1でありますから三角関数が適用で きるので →a = a1,a2 = cosα,sinα →b = b1,b2 = cosβ,sinβ とおくと a1b1 + a2b2 = cosα * cosβ + sinα * sinβ となります:式A ところで便宜上β<αとおくと角θはベク トルaとbとの内角でありますから θ = α-β であり これから cos の加法定理を考えると k = -β とおき cos α+k = cos α * cos k - sin α * sin k 式B cos(-β) sin(-β) = cos α * cos β + sin α * sin β となって式Aと一致することがわかります つまり角θは確かにベクトル→aの基本軸 からの角αとベクトル→bの対応するβの差 分であり、 これは確かにθがベクトル→aとベクトル →bからなる内角であることを示しています (便宜上αがβよりも大きいとしてα-βと いう引数で関数演算をしましたが、これを意 地悪くβ-αとして引数値が負の場合でも式B は成立します その理由はcosの加法定理がαとβに関し て等価だからです この式は、αとβの差分の絶対値のみに反 応する等式です) 9−5 ベクトル式の三角関数表記 前々項で書いた内積のためのベクトルの行 列表示は、実は対応二次元幾何の上で、図形 としてのベクトルをあらわしていません 二次元上のベクトルをその幾何性質を維持 したまま行列(2*2形式)で表現する方法 もあるにはあります ここでは、前項同様その長さが1であるベ クトルを考えます いうまでもないことですが、一般のベクト ルも、係数として自らの長さをくくりだして しまえば、この形式になります この項では、行列の積を考えますので、任 意の二つのベクトル由来の行列積を考えると き、その長さの乗法成分は係数積として議論 の埒外においてしまいます(ぽいっと) 以下の幾何は、事実上三角関数の加法定理 の活用ですが、 冗長になりますのでこの流れでは三角関数 の加法定理の幾何証明は割愛します xy平面上の任意のベクトルを (cosθ,sinθ) ---* とおくと これは、x軸正方向への基準線に対する角θ分 だけ半径1の円周上を移動した点になります これは回転移動ですから、回転の基準点 1,0 を回転の一次変換で変換したものが点*に相当 するわけです 代数的には cosθ -sinθ * 1 = cosθ sinθ cosθ 0 sinθ で一致します ここで ベクトル→aを cosα,sinα ベクトル→bを cosβ,sinβ と置き、対応する回転一次変換の正方行列を 眺めてみると 少なくとも2次の正方行列に限ってはベク トルの積とは回転変換の積であると定義して もかまわないことに気がつきます これは、卑近的にはベクトルの積が現実実 際に対応する概念がないからこそ出来ること で、いわば数学者のお遊びです 数学の世界ではこのような食道にものがつ かえたようなめが白黒はあちこちにあり、そ れは証明以前の定義であるゆえにそれはそう いうものだと受け入れなければなりません いわば、「先輩の横暴」であり、 「そうゆーふうに作ったんだ」という空想科 学漫画のいってはいけない台詞であることに 間違いはありません 笑 ただ、それを言うためには、それを提起す ることが問題ある矛盾を誘導してはだめで、 その定義を含む体系があらゆるテストに無矛 盾でパスすることが必要となります 数学が、実は厳密には自然科学でなく、言 語学であるゆえんですね * 二つのベクトルの例については、回転変換 の業裂でありますから三角関数の加法定理に より以下が証明できます cosα -sinα * cosβ -sinβ = sinα cosα sinβ cosβ cos(α+β) -sin(α+β) sin(α+β) cos(α+β) この演算は、実数のように交換可能です この関係を行列化したベクトルの積として 眺めてみると、任意の長さ1であるベクトル を掛けると、それぞれの角度の和を持つ新し いベクトルがその二つのベクトルの積である ことになります つまり半径1の単位円からみたときには、 ベクトル積はその固有角の和の演算に変換さ れることになるわけです この関係は、複素平面によく似ています たとえば、x^n=1 という方程式において xの値を求めることは実はn乗根を求める一般 的な問題ですが、 これがたとえばn=3のときは三乗根をもと める問題になり、 三乗根の値とその固有角(説明のため360 度単位です)は、 1 0 ω1 = _ -1+i/3 ------ 120 2 ω2 = _ -1-i/3 ------ 240 2 となります 乗法の単位元である1はいくら自乗しても 自らのままですが、 ω1とω2ではそうではありません 三乗根の性質を視点を変えてあらためて示 すことにもなりますが ・ω1を二乗するとω2になることは、固有 角から考えると 120+120=240 となり、一致、 ・同様にω2の二乗は 240+240=480 ですが、円収穫のモジュラー性により、 480−360=120 となってこれもω1になります ・また三乗根の定義によりω1とω2の積は 1になるはずですがこれもモジュラー性によ り 120+240=360=0 となって合致します この考えは、nがもっと大きく一般的な場 合でも成り立ち、x^n=1の解でもあるn乗根の 性質は 360/n つまり2π/nラジアン の単位角をもつ半径1の単位円上の点になり ます もちろんn乗根とは要素n個の数列でありま すから、その値は三角関数の表記を借りて k = 0,1, ...... n-1 のとき cos 2πk/n + i*sin 2πk/n と表記できます なおもちろん三乗根の場合もこの一般式に 合致し、ω1のとき cos 120:2π/3 = -1/2 _ sin 120:2π/3 = +/3 /2 であるわけです 9−6 虚数単位の性質(おまけ) いわゆるド・モアーブルの公式はこの考え 方を拡張して、半径1の単位円上の一般点お ける積を考えるために考えられました 結果としてなぜそれが可能かということは、 点(原点からのベクトル)を複素数表記にす ると虚数項部分の虚数単位が演算に効いてき て、数値を三角関数表記にした場合にそれが うまく三角関数の加法定理のかたちにおさま るからです 三角関数の加法定理といえば、図示してい る幾何もまったく同じところで、2次の正方 行列による回転変換(xy平面)でもそれは顔 を出しています (「三次元随想」のなかでもすこし触れてい ますが)以下のことは適切な入門書があれば たぶん記載されていることだとは想いますが、 筆者は虚数単位iと以下の行列 0 -1 1 0 が相同であるのではないかと気づきました つまり i ≡ 0 -1 1 0 です この正方行列を仮にD :Defferenceと置く と、xy平面での回転変換の行列は cosθ -sinθ sinθ cosθ ですから正方行列の単位元をEとするとこれ は cosθ*E + sinθ*D と表記できます これはド・モアーブルの公式の基礎になっ た表記 cosθ + sinθ*i と対応(おそらく同じもの)です 実際行列Dが虚数の性質を持つことは、 D^2 = 0 -1 * 0 -1 = -1 0 = - E 1 0 1 0 0 -1 と示すことが出来ます (実際虚数や四元数は数列の表現を借りれ ばその性質を探れるものであるらしいこと は三次元随想のなかにすこし触れてはいま す:手前味噌) * ここまで牛刀を振り回した感があります が、(行列という表現の助けを借りて、結 果的に)ベクトルは複素数として表現でき るということを示したわけです 10雑記 以下に書くことを同梱するか筆者はすこし 悩んでいました 人間の遺伝子的バランスの帰結としての、 世間の常識からみて(残念ながら人間は心の 弱い生き物でありその意味で世間はかならず しも極楽浄土ではありません)、「過剰な祝 福に満ちた教育」など生徒の立場から見れば その本人にとって卒業後にいずれ破綻するこ となど残念ながら判りきっています かけっこには6等までの順位をつけるべき ですね その意味では共食いでもある焼肉定食を戦 うためには、迅速な競争という暴力の意味で は「余計」な学問など邪魔なだけです また一方、まったく学が無いと容易に他人 にだまされていいなりになってしまうという 意味で「改めて生存競争の意味で」学問が必 要なことも、 またレンツの法則やル・シャトリエの法則 に現れる反作用の原理としてまた事実でしょ う 飢えて乾いた砂によい教示は引力として吸 い込まれますが、 媚びとして過剰だったり努力の必要のない ほど富裕な子供に、無理に教え込もうとする と反発力が発生します 自分で考える、ということやその力はその 意味でたしかに必要なことですが その背後に潜在的にも競争が存在している という意味において、ポップス・ソング的な 純真さからいえば、一面とても苦いものです (振り返ってみれば、昭和元禄の消費文化は、 工業輸出も含めて、相対的に地球のどこかで ライバルにもなりえない貧困な地域が存在す ることを間接的に必要としていたことを、結 果的にもせよしらしめることを好まなかった という意味で立場上では無責任なものでした 現在の日本の構造的な不況は、この立場が 逆転したことによるものです) 今回のアーカイブ・ファイルが商品である のであれば、「いらっしゃいませの媚び」の 意味では以下のような苦いものを同梱するの は確かにご法度だとおもいます しかしこのファイルは事実上ボランティア であり、またネットの世界があまりにも 「ただでサービスが転がっていてあたりまえ」 という気持ちの上での深刻な巷間の不況の原 因であることを憂う気持ちのうえでも、 今回、以下のような「ときどき機嫌の悪い miyama.さん」をも同梱しようと想いました * お題は「自分でものを考えられることは、 たぶん必要なことであるが、それはしばしば たぶん幸福ではない」です 「電脳的」といういわゆる響きの悪い言葉が ありますが、たしかに幼少の頃から過度にネ ット漬けになってしまうと自分でものを考え る力が失われるかもしれません ただこれはネット時代からだといってそれ が特別の社会現象かというとそうともいえず、 かつてはテレビっ子や本の虫もおなじくくり で扱われてきたものです たしかに、すべての人々が自分でものを考 える必要はかならずしもないとおもいます 森羅万象と衣食住は、巨視的にはどこでも 平坦であり、その需要と制御のために必要な 知識と経験はその種類の数としてはかならず しも多くはありません その意味で、ざっとですが「親方、マエス トロ」といううすい概念をも含めて自分でも のを考える人々とは人口の1、2割いれば十 分な気がします (その意味で、やはり普通科総合教育はその 数が過剰な感触がします。過剰な教育はちょ ろちょろした小ざかしさを量産するだけです) ただ一方、この状態では指示を受ける側の 層は、自分でものを考えることをしない、出 来ないのですから、 考えを指示する側の親方の層は、自分の恣 意で利益を独占の意味で、我が物とすること は、立場の義務としてしてはならない、とい うことなのでしょう (夜郎自大とは同時に幼稚なことであります が、たいていのベンチャーが社会や社会的弱 者を食い物にして短期的に破綻することは、 その状態の反面です 優位の立場と既得権の、義務というものは、 焼肉定食や貴族支配が認められる唯一の方便 です) この状態が世襲の気味を多少帯びるとき、 それはたぶんに封建社会に近くなりますが、 封建社会はいわゆる支配者層にも「家風」な どの名目で成長と上達が強制される事実があ ります 民主主義がナチスを生んだような悲劇に比 べれば、養子縁組や師弟制度などのぬけみち が活用できることが不可能ではない江戸時代 は、自由とわがままのなかでしか生きてはい けない一部の知識人が力説するようには、か ならずしも悪い状態ではありません 尭舜の世が理想であるが、現実はかならず しもそうではないので必要悪として礼をもち こんだのだ、と孔子はいうかもしれません これからの日本はどうころんでも江戸時代 化の道をすすむようでしょうが、 その古臭さを、複雑なことがらが伝達しに くい反面、やさしさとなぐさめが横溢するネ ットの状況とだぶらせ、 「ネット中世」とよんだ人がいます(実名割 愛) もちろんこの言葉は、ネット世論はかなら ずしもものごとの一面しか見ていない負の面 を含んでもいますが。 ネットはすくなくともインフラの意味では なくなりません その意味ではネット依存の状態もなくなら ないばかりか、精神的にそういう生活をする 層が人口のある一定量存在することが、もは やあたりまえになってくるかもしれません しかし幼少の頃からそうであれば、その人 はもはや自分でものを考える力を失っている と見るのが当然でしょう 奴隷には責任という義務はないので、その 意味では気楽な存在ですのでかならずしもそ の身分は居心地の悪いものではありません 奴隷とはかならずしもガリー船のこぎ手の ことをさ差すわけではないからです その意味では、ネット依存のことを奴隷と 読んでもかまわないことになります 「電子小作」とでもいいましょうか。 ただ、奴隷とは本家よりも分家、本貫より は小作を差しますから、より貧しく、つまり 賞賛に値せず(以下エピソードです)、 最近は学校は事実上全入時代なので、みな 学生はおおむね本気で勉強したことがありま せん また何でも検索できますので、目の前のイ グザムはカットアンドペーストでとりあえず は暫定的に切り抜けることが出来ます ある大学生が、ほろ酔い気分で筆者に愚痴 ったことがありましたが、いわく 「彼女にふられちゃったんですよ、あんたと 話していると疲れる。あんたの言ってる語り なんて、結局は誰かの引用じゃない、って。」 その少年は、ひょろひょろした頭の良い子 でした。 頭のよい子はだからこそ自分を磨かないと、 なめくじみたいなギャング(はたちでも小学 生)にしかならないんだな、と内心ためいき をつきましたが。 ・・・貧しいからこそ結婚できないという ことはかならずしもそうじゃないでしょうが、 しかし貧しさが精神の領域にまでいたると、 少なくとも異性からはもてなくなるようです ただ、人口上でのゼロサム社会では子供を 作れない層が存在することは経済上の要請で すが、それはこのような「よごれちまった悲 しみ」によって事実上支えられることになる のでしょう 自分でものを考えないで付和雷同する、現 代ではネット空間の中によく見られるアドマ スとしての悪い意味の大衆を指して 「溶融白痴(白いチョコレート)」 とと揶揄した人がいます ここから先は、プライドや美学の範囲の話 なので、すくなくとも経済学や科学の範疇の 話ではありません (江戸時代の民百姓という意味では、民衆が 構造的な思考をする力はありませんから、こ れはどうしてもその素質やその訓練を受けた 一部の人々にゆだねなければなりません 洋の東西を問わず、素朴な社会では知識人 とは「相談にのってくれる和尚さん」を意味 しました 総本山にいって権力闘争に巻き込まれるよ りも、村の坊主であったほうが幸福である場 合もあったかもしれません) * ただネットの存在だけを悪者にすることは 実際の問題としては不適切です 実はアドマスは、ネットに限らず、マスメ ディア現象があればそれに付随して存在する ものなので、そのような社会現象はたとえば 戦前にもありました ナチスが当選したり、大甘な八紘一宇がま かり通ったりした歴史の記録はその一つでし ょう またネットはなくなりません もともとインターネットは国防総省が開発 した核戦争にも耐えられるように設計された 軍事技術であり、そのなかに全世界的に無数 の電源を内蔵しまた、切断してもプラナリア のように再生する強靭さを持っています 一度ひらいたパンドラの箱を閉じることは 出来ません たいていのメディアが扇情需要で黒字にな るように、ネットも程度の差こそあれ人間と 人類の需要と欲望にくいこんでいる以上、ネ ットも人類が滅びるまでなくなりません(正 確には、人類の技術文明が続く限りですが) ネットの本質は言葉です。 じつはこれは、人類の歴史に基づいて三段 階で考えることが出来ます 1農耕の段階 2手工業の段階 3機械工業の段階 という三段階がありますが、これにみあった 対応として 1書き文字の発明 2グーテンベルグの印刷器の発明 3インターネット(コンピュータ)の発明 こう書くと文字のない世界や本のない世界 が想像できないように、ネットがない世界を 考えることができないことが すくなくとも雰囲気としては説得力をもつ かもしれません コンピュータ、とはなにも特別なものでは ありません 数が言語のひとつであると同時に、そろば んに動力(ただし血糖ブドウ糖ではなく電気) がついたものが計算機です ・言語について 言語は、おそらく発声的な前頭葉の動作手 順バンドルの体系として、動物の右脳的な合 図からおそらく50万年前ごろに発達を開始 しました その意味では言語はまず狩りや逃走などの、 行動前頭葉運動手順のためのシグナルであり、 その意味では外界の名詞としての事物への記 号の意味はもともと(行動修飾語としての意 味こそあれ)原始の言語にはなかったと推測 できます 仮説として、言葉はまず行動に結びついた ものであり、意味に結びついたものではなか ったかもしれません 「すべての言語はまず表音的なものである」 という仮説がかけるかも知れません また、「すべての名詞とは副詞としてはじ まった」という仮説はどうでしょうか 行動が動詞であれば、動詞が主体であれば、 その目標である目標体は、行動の進路を「制 御補助する副詞」でしかありません これは生理学的には自然に着想できる概念 です 動詞 −動作観念名詞 ^ | 方向制御副詞 − 制御副詞 | ・− 原始目標副詞 − 目標語名詞 この意味では、鹿は「狩られるもの」林檎 は「たべられるもの」ということになります つまり「鹿にむかって」突撃、「林檎にむ かって」咀嚼、ということです この段階での言語の語彙は、おそらく多く て百語前後ぐらいだと想います 農耕が開始され、定住により空間や時系列 を越えて情報を伝達する必要が生まれると、 書き文字が必要とされるようになってきまし た 洋の東西を問わず、最初の文字は表意文字 でした いわば目標物を記録する地図や目録として 発生したのです 一方、静的に記録する体系の中で合図とし ての動詞が観念名詞化していきます 合図としての「たべろ」は原始動詞ですが、 書き文字としての「たべる」は「たべること」 という意味を持ち、人称の横滑りと同時に動 詞の観念名詞化が進行します 書き文字の発明とともに、おそらくは相対 的に名詞の数が増大し、このころの文明では 語彙はおそらく数百になっていたことでしょ う このように、言語や語彙は社会の性質を反 映し発展や変化をしていくものです そしてこのことはおそらく重要なことです が(おそらく一部ごくわずかの遺伝子の重複 により)私達は、おそらくは実需以上の潜在 的な能力をおそらく数十万年前ごろに獲得し てしまっているのです 長文の小説を読み、そして機械用に開発さ れたプログラミング言語を編み出して使用す ることも、 おそらくはどんなに浅く見積もっていても 10万年前から(行くたびかの絶滅の危機に さらされながらも)人口がある程度増える限 り、あらかじめ約束されていただいたいの予 定だったのかもしれません ・まだ幼年期なネット ただ、こんなに大上段に振りかぶった議論 をいくらふりかざしたところで、 実際のネットはまた本格稼動がはじまって 10年余りしか立っていません(一般開放は 1994年ですが、実質的な発展はウィンド ウズ98マシンが本格的に発売された199 9年以降からになります) その意味では、現状はわれわれはまあ(倒 産事業者の痛みは斟酌しますが)よくやって いるほうなのかもしれません ただこのような意味で、正統的な言語の嫡 子でもあるコンピュータ(ネット)の世界で も悲惨な歴史の記録が文字の世界の中にある ことと同様に、同時に苦味や痛みがある(で あろう)こともまた同様でしょう ネットのなかになんでもあるからといって、 義務感なしに安易にダウンロードやペースト に依存していると、いつのひかていたいしっ ぺ返しをうけるのは、おそらく現実社会と同 様です(まともな企業であれば、人事は人相 を見抜きます) そのような悲劇を避けるためには、自分で 考えて決断をだすことはとりあえずともかく、 ときどきたちどまって考える訓練をすること は大事かもしれません 「亜空間」でコンテンポラリーに付和雷同し てたほうが精神的には楽なんでしょうが、そ れは宿題をしないで寝てしまうだらしなさに 少し似ています miyama.